さて久々の更新です。少々サボり気味ですみません。
古文の単語の中には、複数の現代語訳を持つものがあります。例えば「をかし【形容詞・シク活用】」だと
面白い・趣がある・風情がある
- 賞すべきである・優れている・見事だ
- かわいらしい
- こっけいだ・笑いたくなる
(以上改訂新版旺文社古語辞典より)
と、大体こんな感じの意味があるわけですが。
こういうの、一つ一つの意味を単に羅列的に覚えるんじゃなくて、その言葉の「本来的な意味のイメージ」みたいなものをしっかりつかんでおくと、理解がスムースになりますよ、というのが今回の話。
「をかし」の意味を考えましょう
さて、導入で取り上げた「をかし」ですが…これに漢字を当てると「招かし」となります。「まねく」という字ですよね。ここからもわかるように、本来「をかし」という語は
「何かに心惹かれて、思わず近くに招きたくなる。引き寄せたくなる」というような意味を持ちます。砕けて訳せば「おいでおいでしたくなる・お持ち帰りしたくなる・ギュってしたい!!」というような、そういうイメージ。
雁などの連ねたるが、いと小さく見ゆるは、いとをかし
訳はこんな感じでしょうか
「雁なんか連なって飛んでいるその姿がとっても小さく見えるのって、思わずおいでおいでしたくなっちゃうわよ!!」
けづることをうるさがり給へど、をかしの御髪や
「梳かすことをめんどくさがりなさるんだけど、ほんとにまあ思わずお持ち帰りしたくなるくらいの御髪よね!」
猫はいとをかしければ
「猫ってそりゃもうギュってしたい感じだからね…」
とまあ、こういうふうに考えるといいわけです。もちろん試験でこんなに砕けた訳を書くわけにはいきませんけど、理解としてはこういうこと、その上でそれぞれ
「雁などが連なって飛んでいるその姿が、たいそう小さく見えるさまは、たいそう趣がある」
「梳かすことを面倒がりなさるが、なんとまあ見事な御髪であることよ」
「猫はたいそうかわいらしいので」
程度の訳を書いておけばOKです。
よく、「をかし」は客観的感動、「あはれなり」は主観的感動…なんていいますけど、それも上記の論で説明できますね。あくまで対象として、他者として「招きたい」わけですから、そこに過剰な感情移入はないわけです。
ちなみに…
「をかし」の語源には他の説もあって、そのうちの一つが「痴(をこ)=ばか・愚か」から派生した…というもの(というよりむしろこちらの説の方が有力なようです)。だとすると上記の内容ぜーんぶでたらめになっちゃうんですけどね!!
まあ、記憶なんてそういうもんです。単なる丸暗記より、何らかの説明が与えられた方が(その説明が事実か否かに関わらず)覚えやすいもんですからね。語呂合わせなんてその最たるものです。とりあえずみなさんは
「をかしの語源は『招かし』であり、そこから~のような意味が生じた…(というのは眉唾である)」というところまで認識しといていただければ幸いです。
他にも「あはれなり」をはじめ、「やる」とか「あやし・いやし」とか「わたる」とか、しっかり語のイメージを持っておきたい単語はいろいろあるのですが…久しぶりの更新で疲れちゃったので今日はここまで。詳しく知りたい君は升形国語塾へレッツゴー!!