活用形の用法(4/15古初-1,2)②


前回の記事の続きです。

終止形の用法

1.平叙文終止

文の最後は終止形…というふうには考えない方がいいですよ。この後に説明しますが、文末に来る活用形は「終止形・連体形・已然形・命令形」の4種類。あくまで終止形で終わるのは「平叙文」のみです。

花、咲く。/花が咲く。

2.確実性の高い推量表現

「推量系の表現は未然形接続」というお話は前回出てきましたが、同じ推量表現といっても、その確からしさには差があります。「先のことではあるけれど、ほぼそうなることは決まっている」ような表現の場合、未然形接続ではなく終止形接続になります。

花、咲くべし。/花が咲くだろう。

終止形接続の助動詞

推量:べし

打消推量:まじ

推定:らし

伝聞・推定:なり

推量・婉曲:めり

現在推量:らむ

「終止形接続」についての注意

助動詞の単元を取り上げた時に詳しい話をすることになりますが、いわゆる「終止形接続の助動詞」は、実は常に終止形接続になるわけではなく、ラ変型活用語に続く際には連体形に接続します。ですので「終止形接続ただしラ変型活用語には連体形接続」というのが正しいのですが、毎回そういうのも面倒なので「終止形接続」という形でまとめるのが通例です。

 

連体形の用法

1.文中で連体修飾語になる

これは基本中の基本ですね

咲く春となりにけり。/花が咲く春になったことだ。

2.体言の代用=準体法

「~すること」「~するもの」のように、活用語を名詞化して使う用法です。

「連体形接続」の助動詞について

「なり(断定)・たり(断定)・ごとし(比況)」は通常連体形接続の助動詞とされますが、これらの語についてはむしろ「体言接続」であると考えた方が適切かと思います。「原則体言に接続、活用語に接続する際には連体形(準体法)に続く」ということですね。

実際、活用語連体形に直接接続する用法は、上記三語のうちでもほぼ「なり」に限られます。

咲くを待つ。/花が咲く時を待つ。

準体法の訳は「こと・もの・とき」その他、適切と思われる体言をその都度補って訳します。

3.疑問文・感動文終止

多くは係助詞「ぞ・なむ」=強意/「や・か」=疑問・反語 を伴い、その結びとして現れる形です。

花ぞ咲く。/花が咲くことだ。

花や咲く。/花が咲くか。

雀の子を、犬君が逃がしつる。/雀の子を、犬君が逃がしてしまったの。

最後の例文のように、係助詞を伴わずに結びが連体形になる形も存在します。

 

已然形の用法

已然形の「已」の字は「すでに」と読みます。原則として「もうすでに起こってしまったこと」を表す活用形です。用法は限られているので、きちんと覚えておきましょう

1.確定条件

接続助詞「ば(順接)」「ど/ども(逆接)」を用いて、主に確定条件の接続を表します。

花咲けば…/花が咲くので…

花咲けども…/花が咲くけれども

特に接続助詞「ば」は要注意です。「ば」は未然形に続く時には順接仮定条件(もし~なら…)、已然形に続く場合には順接確定条件/偶然条件/恒常条件(~なので…/~すると…/~する時はいつも…)をあらわします。

 

2.係助詞「こそ」の結び

係助詞のうち、「ぞ・なむ・や・か」は連体形結び、「こそ」は依然形結び…というのは中学レベルの知識です。覚えていますね。

花こそ咲け。/花が咲くことだ。

3.完了の助動詞「り」に接続(四段活用動詞のみ)

これ、前回の記事の「連用形接続の助動詞」のところでちょっとお話ししました。助動詞は接続に注目すると「未然形接続・連用形接続・終止形接続・連体形接続」の4つのグループに分けることができますが、そのどのグループにも入らない仲間はずれが完了の助動詞「り」です。「り」は【サ変動詞の未然形又は四段動詞の已然形】に接続する(さみしいリカちゃん)のでしたね。

咲けり。/花が咲いた。

命令系の用法

1.命令文終止

特に説明の必要もないと思います。命令の形で言い切る用法ですね。

花よ咲け。/花よ、咲きなさい。

2.放任法

例えば貴方が某国のスパイで、何かの拍子で対立する組織に捕らえられて、味方の機密をしゃべるよう厳しい尋問を受けている…そんな時、こんな風に言ったとしましょう。

「ええい、殺すなら殺せ!!私は絶対にしゃべらないぞ!!」

この時の「殺せ」は命令形ですが…「ほら殺せ!!さあ殺せ!!!いいから殺せ!!」という具合に文字通り「命令」しているわけではないですよね。この発言の真意は「殺すというのなら殺されてもかまわない」というくらいのところでしょう。

こういう形から転じたものと思われる命令形の用法が「放任法」です。強く「命令」をするのではなく、「~でも何でも構わない/~はどうでもいい」というような意味を表すために命令系を使うのです。

いづくにもあれ、しばし旅立ちたるこそ、目覚むるここちこそすれ。/どこへでも構わない、しばらく旅に出ているということは、はっとするような気持ちがすることだよ。

現代でも「ええい!!どうにでもなれ!!」なんて言い方、しますよね。これが命令系放任法です。

 

まとめ

というわけで二回にわたってお送りしました「活用形の用法」いかがでしたでしょうか。現時点では「全部完璧に丸暗記」という必要はありません。今後、用言や助動詞の用法を学んでいく中で、その都度確認していきましょう。

 

それではまた次回!

 


投稿者: 大森 太郎

升形国語塾の代表をやってます。

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