イメージで覚える古文単語

さて久々の更新です。少々サボり気味ですみません。

 

古文の単語の中には、複数の現代語訳を持つものがあります。例えば「をかし【形容詞・シク活用】」だと

面白い・趣がある・風情がある

  1. 賞すべきである・優れている・見事だ
  2. かわいらしい
  3. こっけいだ・笑いたくなる

(以上改訂新版旺文社古語辞典より)

と、大体こんな感じの意味があるわけですが。

こういうの、一つ一つの意味を単に羅列的に覚えるんじゃなくて、その言葉の「本来的な意味のイメージ」みたいなものをしっかりつかんでおくと、理解がスムースになりますよ、というのが今回の話。

おかし…
おかし…

「をかし」の意味を考えましょう

さて、導入で取り上げた「をかし」ですが…これに漢字を当てると「招かし」となります。「まねく」という字ですよね。ここからもわかるように、本来「をかし」という語は

何かに心惹かれて、思わず近くに招きたくなる。引き寄せたくなる」というような意味を持ちます。砕けて訳せば「おいでおいでしたくなる・お持ち帰りしたくなる・ギュってしたい!!」というような、そういうイメージ。

雁などの連ねたるが、いと小さく見ゆるは、いとをかし

訳はこんな感じでしょうか

「雁なんか連なって飛んでいるその姿がとっても小さく見えるのって、思わずおいでおいでしたくなっちゃうわよ!!」

けづることをうるさがり給へど、をかしの御髪や

「梳かすことをめんどくさがりなさるんだけど、ほんとにまあ思わずお持ち帰りしたくなるくらいの御髪よね!」

猫はいとをかしければ

「猫ってそりゃもうギュってしたい感じだからね…」

 

とまあ、こういうふうに考えるといいわけです。もちろん試験でこんなに砕けた訳を書くわけにはいきませんけど、理解としてはこういうこと、その上でそれぞれ

「雁などが連なって飛んでいるその姿が、たいそう小さく見えるさまは、たいそう趣がある」

「梳かすことを面倒がりなさるが、なんとまあ見事な御髪であることよ」

「猫はたいそうかわいらしいので」

程度の訳を書いておけばOKです。

よく、「をかし」は客観的感動、「あはれなり」は主観的感動…なんていいますけど、それも上記の論で説明できますね。あくまで対象として、他者として「招きたい」わけですから、そこに過剰な感情移入はないわけです。

 

ちなみに…

「をかし」の語源には他の説もあって、そのうちの一つが「痴(をこ)=ばか・愚か」から派生した…というもの(というよりむしろこちらの説の方が有力なようです)。だとすると上記の内容ぜーんぶでたらめになっちゃうんですけどね!!

 

まあ、記憶なんてそういうもんです。単なる丸暗記より、何らかの説明が与えられた方が(その説明が事実か否かに関わらず)覚えやすいもんですからね。語呂合わせなんてその最たるものです。とりあえずみなさんは

「をかしの語源は『招かし』であり、そこから~のような意味が生じた…(というのは眉唾である)」というところまで認識しといていただければ幸いです。

 

他にも「あはれなり」をはじめ、「やる」とか「あやし・いやし」とか「わたる」とか、しっかり語のイメージを持っておきたい単語はいろいろあるのですが…久しぶりの更新で疲れちゃったので今日はここまで。詳しく知りたい君は升形国語塾へレッツゴー!!

 

夏期講座の話

OLYMPUS DIGITAL CAMERA

いよいよ夏、という風情の空が見えるようになりました。

さて、ちょっとまだ先の話ではありますが、夏期講座の予定を考えています。

今のところ構想はこんな感じ

講座の日程

  • 七月通常授業…7/16(土)まで
  • 夏期講座期間…7/18(月)~8/6(土)
  • 夏季休業…8/7(日)~8/14(日)
  • 八月授業…8/15(月)~8/31(水)
  • 九月通常授業…9/1(木)から

三日間連続講座

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逆転の発想(5/9現初-4)

連休明け最初の更新です。

そろそろある程度記事もたまってきましたし、ちょっと肩の力抜きつつちょこちょこ更新していこうと思います。ではいってみましょー。

 

正直そろそろ見出しとか分けるのめんどくさくなったから適当に行くね。

今回は高校新演習スタンダード第2講練習問題、野矢茂樹「哲学・航海日誌Ⅱ」よりの出題。

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カメラの話

OLYMPUS PEN Lite E-PL6

今回塾を始めるにあたって、カメラを買ったんですよ。教室設備の紹介とか、このブログ記事に写真載せたりとか、あとうちでは生徒名簿に写真載せてるので、そのためもありまして。スマホのカメラで事足りるかとも思ったのですが…宣伝にも使うものですし、やはりそれなりのものを用意した方がいいと考えまして、で、買ったのがこちら、OLYMPUSのミラーレス一眼、PEN Lite E-PL6というモデルです。

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助動詞「らむ」の用法(4/29古初-4)

さて今回の復習は助動詞「らむ」について

助動詞の3要素

このブログでひとつの助動詞をメインに取り上げるのは多分初めてだったと思うので、助動詞の学習を進める上での基本となる要素を確認しておきます。「助動詞の3要素」とはすなわち

  • 活用
  • 意味・
  • 接続

ですね。例えば助動詞「む」であれば

助動詞「む」は四段型活用で、「推量・意志・勧誘・適当・仮定・婉曲」などの意味を持ち、活用語の未然形に接続する。

というふうに理解しておかなければいけませんし、また文中で

秘すれば花なり。秘せざるは花ならず。

とあれば

この「ざる」は打消の助動詞「ず」の連体形で、サ変動詞「秘す」の未然形に接続している。

と、答えられるようにしておかなければならない、ということです。

大学入試で求められる文語助動詞は約30個くらい、そのすべてについて活用・意味・接続を覚えておかなければならない…というと大変そうですし、実際結構大変ではあるのですが。ただある程度工夫をしながら、それぞれの助動詞を関連させて覚えていくことで、多少はその労力を軽減することもできます。

例えば…四段型活用の助動詞は上に挙げた「む(推量)」のほかに「けむ(過去推量」「らむ(現在推量)」の3つのみ。「けむ」「らむ」は「む」から派生したもので、意味的にも重なっていますよね。

また、以前の記事でも書いたように、助動詞の意味と接続にはある程度関係があります(先のことを表現するのは未然形接続・過去や完了の表現は連用形接続…という具合に)。

この辺りを意識しながら、しっかり覚えていきましょう。

 

では、以下「らむ」について

助動詞「らむ」

活用

基本形 未然 連用 終止 連体 已然 命令 活用の型
らむ らま らみ らむ らむ らめ らめ 四段型

薄字で書いた活用形はほぼ用例がなく、多くの場合活用表では空欄になっている部分です。ですので、「らむ」の活用を「○・○・らむ・らむ・らめ・○」というふうにおぼえている人も多いと思うのですが…それではどこが「四段型」なのかわかりにくいですよね。基本的に、一部の特殊な活用をする助動詞以外は、活用表を丸暗記するのでなく「○○型の活用」というところだけ覚えておけばOKです。(そうやってたくさん練習していくうちに、自然に覚えていくとは思いますが)

意味

「らむ」は「眼前にない現在の事実を推量する」表現です。学校文法では、大体以下の4つの用法に分けて考えます。

①現在推量(今頃~だろう)

わが背子はいづく行くらむ/私の愛しい人は今頃どこを通っているだろう

眼前にいない「背子」の現在の様子を推測している形ですね。

②原因推量A(~だからだろう)

冬ながら空より花の降りくるは雲のあなたは春にやあるらむ/冬なのに、空から花びら(のような雪)が降ってくるのは、雲のはるかかなたは春であるからだろうか。

眼前の「冬ながら空より花の降りくる」という光景から、その原因として眼前にない「雲のあなた」の様子を推測しているわけです。

③原因推量B(~のはなぜだろう)

ひさかたの光のどけき春の日にしづ心なく花の散るらむ/光ののどかな春の日に、落ち着いた心もなく花が散るのはなぜだろう

②とよく似た形ではありますが、「しづ心なく花の散る」というのは、おそらく歌の詠み手が「眼前」に見ている光景でしょう。そこからはっきり見えないその理由を推測している、と考えます。

④伝聞・婉曲(~ような・~そうだ)

あうむ、いとあはれはり。ひとのいふらむことをまねぶらむよ。/おうむはたいそう趣深い。人の言うようなことを真似るそうだよ。

接続

推量系の助動詞は主に未然形接続のものと終止形接続のもの(比較的確実性が高いもの)がありますが、「らむ」の現在推量の意味に未然形接続はそぐわないでしょう。ですので「らむ」は「終止形接続」の助動詞のグループに入ります

ただし、「終止形接続の助動詞は、ラ変型活用語に対しては連体形接続になる」という鉄則は忘れないようにしましょう。

いづく行く【カ四・終止形】らむ

春にやある【ラ変・連用形】らむ

こういう感じですね

 

蔵書の紹介①-四月は君の嘘・ルドルフとイッパイアッテナ・日本の古典を読む・Newton

さて、今日はうちの教室においてある蔵書の一部を紹介します。教室においてあるので、塾生産はすべて自由に読んでもらって結構ですよ!

 

アフィも貼るからよかったら買ってね…でも紙の本は急がないなら近所の本屋さんで買うのがお勧めだよ!いま街の本屋さんは大変だけど、なくなっちゃったら困るからね!

 

とりあえずはマンガから

四月は君の嘘(新川直司 講談社コミックス月間マガジン)

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「歌合」あれこれ(4/26古上-3)

紀友則の名歌

さて今回は「十訓抄」から

寛平の歌合(うたあはせ)に、初雁(はつかり)を、友則、

春霞かすみていにし雁がねのいまぞ鳴くなる秋霧の上に

と詠める、左方(ひだりかた)にてありけるに、五文字を詠じたりける時、右方(みぎかた)の人々、ことごとく笑ひけり。さて、次の句に、「かすみていにし」と言ひけるにこそ、音もせずなりにけれ。

 

【寛平年間(889-898)に行われた歌合わせの際に、「初雁」の課題を、紀友則が

「春霞とともにはるかかすんで去っていった雁が、今まさに鳴いているようだよ、秋霧の上に」

と読んだ折、(友則は)左方であったのだが、初句(の春霞)を朗詠したとき、右方の人々は、みんな笑った。そうして、二句に「かすみていにし」と(友則が)言ったときには、声も出さなくなってしまったことよ。】

ちょっと解説が必要ですかね、「和歌」においては、季節感が非常に重視されます。季節を外した和歌っていうのは失敗作なわけですね。秋の季節を表す「初雁」という題で和歌を詠まなければならないのに、友則は「春霞~」から詠み始めた。それを聞いた人々は「おいおい季節が違うじゃないか」と思って笑ったわけです。ところが二句の「かすみていにし」の句を聞いて「あっ」っと気づいた。「いに」の「し」は過去の助動詞連体形です。「そうか、『春霞』は過去の話だったのか!そこから『秋』につなげるつもりなのか!!」そう思った人々は早とちりして笑ってしまった自らを恥じて黙ってしまう…という場面です。

なお紀友則は平安時代に活躍した歌人で、「古今和歌集」の選者の一人としても有名ですね。古今集の選者は友則のほかに3人、覚えていますね

→正解はこちらをクリック≪紀貫之・紀友則・凡河内躬恒

本文はこの後「人の話を最後まで聞かないで笑うなんてよくないよね、それにもし他人が本当に間違ったとしても、自分が困るわけでもないのに無理にケチつけてどうすんのよ」というふうに使うわけですけど。

今日はこの文章の舞台となった「歌合」について、少し書いてみましょう

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「大きい政府」と「小さい政府」のこと(4/25現初-3)

さて今回は高校新演習スタンダード現代文Ⅰ第1講の練習問題、村上陽一郎氏の「情報と科学・技術」からの出題です。

ちょっと出典が収録されてる本がわからないんですけど、この辺かなあ

村上陽一郎氏は科学史・科学哲学あたりの学者さんですね。一般向けの著書も多く、大学入試や高校入試でもよくお名前を見る方です。

読解の技法(接続詞・指示語など)については前回説明しましたので、今回は文章内容の説明をメインにしつつ、技法の確認を進めました。

本文に書いて「ない」知識も必要です。という話

正解はすべて本文の中に書いてある」というのは、国語の読解ではよく言われることですけど…これはまあ、ちょっと言葉の綾みたいなところがあるんですよね。例えば次の一文。

掃除をしていたらパソコンのコードに足を引っかけて、電源プラグがコンセントから抜けてしまった。

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